つぶやいたり、描いたり。波に攫われる前の、ほんの一瞬。
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青春文芸セレクションというシリーズは、どうも若くして亡くなった作家さんの作品を掘り出してまとめているシリーズのようです。割と知らない名前の作家ばかりで、この人の名前も初耳。

久坂葉子は、今から五十年ほど前、いくつかの作品を残して鉄道自殺してしまった(享年21歳)若き作家。本の帯には、「女太宰」と称された伝説の夭折作家、とありました。

本書には、表題作のほか小説「華々しき瞬間」、自伝的エッセイの「久坂葉子の誕生と死亡」、死の直前に書かれた遺稿(というか、これは遺書と言ってもいいような気がするんだけどな・・・)「幾度目かの最期」を収録。



まず「ドミノのお告げ」。没落していく名家の娘(賭け事が好き)を中心に、肺病で気難しい父、モーツァルトが好きで、これまた病気療養中の兄、繊細だけど屈折してしまった弟、宗教に嵌っている母の姿が描かれる。

読んでまず思ったのは、あ、構成がちょっと「斜陽」に似てる・・・ということ。特に弟の造形が。だから女太宰なのか、と単純に結び付けちゃいけないけど。

母親のキャラクターは、たまたまこないだ読んだ「貴族の階段」の母親を思い出させた。

正直、他の作品に比べると私の中での印象は薄かったです。けど雰囲気はちょっと惹かれる。日々生活が破綻に近づいている焦りを、頭の中では誰もがものすごく感じていながら、どこかでゆったり構えている。それは危機感が欠如してる、というより、破滅をゆっくりと待っていると言ったほうが正しいのかも。急流に落ちる直前に、ほんとは気が狂いそうに怖いのに笑って優雅に泳いでいる感じ。読んでてじわじわ怖い。



ラストがなんというか、うーん。最後二行がちょっと、邪魔かも・・・。



「華々しき瞬間」。こちらは、いくつもの顔をもつ女、南原杉子をめぐる人間模様。四作で一番、面白く読んだ。彼女は、他人の仮面を暴くために、いくつもの仮面を装っているような女性なんだ。仁科六郎、という男と恋をするために、彼女は「阿難」という人格を自分の中に意図的に作り上げるんだけど、次第に余裕を失っていき、ついには阿難を押さえておくことができなくなってしまう。

理性の勝った文章だなあ。何だろう、びっしり文字がつまってる感じで、ちょっと息苦しいなあ、なぜ?と思ったら、やたら会話文の連続と、登場人物の細かい心理説明が多いんだ。それも面白さと言えば面白さ、なのかな。



「名前」の持つ魔力。ある感情、ある立場の時の自分の態度に名前をつけてしまうことは、その感情の制御を放棄して、一人歩きを許してしまうことなのかも。

あ・・・「ゲド戦記」思い出すよ、名前と言えば。



心理ミステリーみたいなところが飽きない(だからこそ、やっぱりラストはちょっとがっかり)。南原杉子は理性を持った主人格のようなんだけど、時々、それすらも作られた人格なのではないかと思うときがある。妙に、客観的に自分のことを分析する場面があって、そういうときは、また違う人格が彼女を見ているような印象を受けるから。

本当はどれも真っ黒な虚無から生まれてくるのかもしれない。虚無、という言葉の意味とは矛盾してるけど。今こうして考えている自分は、何者でもないかもしれない、という恐怖感を覚える。足元ぐらぐら。



「久坂葉子の誕生と死亡」は、彼女が自分の作家デビューから挫折を自嘲的に綴ったエッセイ。あんまり自嘲的なんで、読んでてちょっと痛い。最後は、作家としての「久坂葉子」(これ、ペンネームです)を自らの手で葬ってやろう、「お前は、ほんとに馬鹿な奴だ」と弔電を打ってやろう、といわれると・・・なんとも言い様がないです。



「幾度目かの最期」。上ので痛い、と言ってた私には、これはちょっと劇薬でした。め・・・滅入った。あまりにもね、恋愛の馴れの果てと家族の問題について赤裸々に書いてあって、辛かった。父への辛らつな批判の箇所なんかは、あんまり人事として読めなかったし。

しかし、子供というのは(自分も含めて)容赦ないと思う。親への分析が。

恋愛について書かれた部分では、ああ、この人は確かに「ドミノのお告げ」の作者なんだなあ、と思った。自分でもどうしようもなく、自分を貶め苦しめるほうに向かってしまう人。はっきり言ってこんな心理は理解できないんだけど、止められない自分を憎む気持ちはよくわかった。



でも、これ、小説二作と一緒に入れちゃうのはどうなんだろう。ネタばれ・・・というか、舞台裏を見たくない人もいるような気がする。あー、モデルがいるのか、経験が下敷きなんだ、と思ってしまうとちょっとなー。うーん。





この人の詩や他の小説にも、ちょっと興味。けど、読むと少々重い気持ちになるのは確かだ。また時間を置いて読もうかな。とりあえず次は、気分の変わるものを読もう。ずーん。
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