つぶやいたり、描いたり。波に攫われる前の、ほんの一瞬。
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ほとんど作品ごとに「うう、この作品が一番かも・・・!」なんて涙していた一冊。これは、ヘッセの大人向け創作童話集。全九話です。

ここ最近の、一番のヒットかも。



童話だけど、とても深遠なテーマを秘めていると思った(美とか愛とか、単純な言葉で代用してしまうと陳腐になっちゃうんだけど。言わば、言葉という形の向こうにあるものへの追求というのかしら・・・。その追求にこそ、人生の意味を見出そうしてるように感じられる)。そのテーマを、何度も何度も違うメロディで奏でているんだ、ヘッセさんは。

全てが夢の中のように柔らかく美しい表現なので(原文もそうなんだろうけど、訳者の力もすごいと思う!)、それを壊さないように、そーっとそーっと、息を詰めて読む。ラストシーンではいつも胸がぶるぶると震えてしまい、声を出して泣きたくなるのだけど、なんだかそれをするだけで台無しになりそうなほど、繊細で脆くて、美しい世界。大好きだ・・・(涙)



特に好きな作品(どれも好きだけど)を、いくつか紹介。

「アウグスツス」・・・お母さんが「誰にでも愛される子になるように」と願ったために、愛を知らず傲慢になってしまい、生きる意味を見失う青年の苦しみと、救済(こうして書いちゃうとあんまり面白そうでもないんだけど、その救済までの過程が細やかで良い)。これは、こないだ書いた「お母さんが読んで聞かせる絵本」に載ってたけど、あっちはダイジェスト版だったのね。さらに胸を打つ作品になってました。自分を憎み、さげすむ人々の中に、ほのかな優しさの炎やそれぞれの人生を見出し、それがために彼らを愛するようになる主人公。悪人から善人にかわって、はい終わりじゃないところが良いのです。彼が赦されて、少年時代の夢の中(それは二度と目覚めなくていい夢なのだけど)へと還っていラストくシーンあたりは、もう駄目です。泣く・・・。この作品は、子どもにも分かりやすいかな。



「詩人」・・・この世界のすべての美しさを傍観者として捉え、自分の詩の言葉によって描く世界と、実際の世界が区別できなくなるほどの詩人になりたいと願う青年の話。私は詩人になりたいと思ったことはないけれど、彼の詩に対する切望、求める理想に自分が遠く及ばない時の絶望を共有することはできる。

長い年月を経て彼が完全な詩人となったとき、言葉は失われ、音楽だけが残った。ヘッセの世界では、たびたび言葉がぶあつく邪魔な鎧のように扱われているなあ、と思う。本質に到達する前の、幾重にも重なっている鎧。



「笛の夢」「夢から夢へ」・・・この二つは、ストーリーに違いはあるけれど、美しいものや真実を追いかけるがゆえの歓喜と苦痛を行ったり来たりするような話だと思う。美しいものと調和して歓喜に震える次の瞬間、暗黒に引き摺り下ろされ、地に這っている自分に絶望して・・・そんなことを繰り返すうち、いつしか年老いている自分を発見する。私たちが求めてやまないものは、どうしていつも留まってはくれないのだろう。どうして私たちは、いつでもそれらが逃げる瞬間を見落としてしまうんだろう。読んでいると、そんなことばかりが頭をよぎって、悲しくなる作品。でも好きなんだけど。



「アヤメ」・・・最も好きな作品。幸福な少年時代を送るアンゼルム。全てが美しく輝かしい時代の中で、彼が最も幸せを感じるのは、美しいアヤメ(イリス)の最初の一花が咲き、その花の中を眺めるときだった。その中には、神や永遠を見ることができたから。しかし、少年時代はある日突如終わりを告げ、それまで美しく見えていたものは輝きを失う。青春時代が来たのだ。

さらに月日は流れ、彼は学者として成功する。そして、友人の妹である「イリス」という女性に惹かれていく。彼女のどこに惹かれているのが、自分でもはっきりわからぬまま。本質的に、自分には合わぬ女性であると思いつつも、イリスの中の何者かが彼を惹きつけたのだった。

そしてついに彼がイリスに求婚した時、彼女はそれを拒み、一つの謎を与える。その謎は、彼を苦悩へ、深い考察へといざない、そして最後に「形」を越えたもの、彼が幼年時代に触れていた世界の全てをもたらすことになる・・・。

 

このイリスという女性の言葉が、とても印象に残る。一つは、アンゼルムの求婚に対する言葉。「今あなたにとっておもちゃであるすべてのものが、私にとっては生命そのものなの」であると彼女は言い、そしてまた、彼にとって大切なものが、自分にとってはおもちゃである、と言う。そして、自分はもう変わることはできないけれど、あなただって全てを投げ出して変わることはできないでしょう?と問いかけるのだ。あなたは私をかわいいと思ってくださるけれども、それは結局、美しいおもちゃにすぎないのだとも。

この言葉は、かつて私が誰かに言いたかったことだったから印象に残ったのかもしれない。



そしてまた、彼女は死に臨んでこう言う。アンゼルム同様、自分もまた、美しいものを求め続ける一生であったが、それはすべて「形」に過ぎなかったと。そして今ようやく、「形」の向こうにある故郷へ帰っていけるのだと。あなたもいつか、そこへ到達するだろうと。

この言葉と、物語のラストシーンは、どちらもあまりに美しくて、さびしくて涙が出る。全てを手にするとき、全てが理解される時、それは必ず、人間としての生を終えるときであるから(この童話集の大半が、そういう終わり方になってる)。そうでなくてはいけないのだ、と思いつつ、やっぱり悲しくなるのはなぜなのだろう。

ミヒャエル・エンデだったかな、「死ぬことは、生まれるときに通ってきた門を逆に戻っていくようなものだ」という意味のことを言ったの(全然違ってたらごめんなさい)。あれを思い出させる物語。ヘッセはいつも、幼年時代に戻ろうとしていたのだろうか。あまりにも綺麗な幼年時代が、常に彼を遠くから呼びつづけ、引っ張りつづけていたのだろうか。

何だか、羨ましいなあ。



うーん。なんだかぽーっとなりすぎてわかりにくい感想に終始してる気がする。あ、いつもか。


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