つぶやいたり、描いたり。波に攫われる前の、ほんの一瞬。
また、夢野久作です。これは筑摩書房から出てる、文庫版全集の第三巻。表紙の絵、一見パステルカラーで綺麗・・・?と思いきや、やっぱり相当禍禍しい雰囲気を醸し出してる。水死体みたいな女の人が波間を漂ってるんだけど、口元がね、怖いの。歯を食いしばってる。その口には、一筋の髪の毛が・・・!うーん、ぴったりの表紙だと思うよ!



この三巻は、比較的短めの作品や短歌、詩のようなものがいっぱい収められています。ちょっと名前だけ挙げておくと、「猟奇歌」「あやかしの鼓」「押絵の奇蹟」「童貞」(この辺は割と、お馴染み?)「けむりを吐かぬ煙突」「涙のアリバイ」「黒白ストーリー」・・・・などなど。

当たり前だけど、これだけあるとどれもこれも好きってわけにはいかないかな。結構、作風が色々かも。



いいなーこれは、と思ったのは、まず一番はじめの「猟奇歌」。「猟奇」という雑誌に掲載されてた短歌をたくさん集めたもの。一言で言うと、「物騒なイメージの万華鏡」とでも申せましょうか・・・。ふとした行動に潜む狂気、殺人(もしくは自殺)願望、水に浸したインクのように滲み出る、死の影。これだけ書いちゃうと随分趣味が悪い短歌だなー、という感じなんだけど、そこは作者の腕の見せ所、で、どこかにユーモアがあったり、お洒落でさえ(!)あったりする(・・・と思うのは、贔屓目なのかしら)。

これ、一つ一つをカードにして、宇野亜喜良の絵などで見てみたいなー、なんて思うのです。字体も凝って、表に短歌、裏に絵みたいなので。ちょっと妄想・・・。



他に、これは好き!と思ったのは、悪夢をオムニバスにように綴った「快夢」(最後の「硝子世界」が中でも好き。スケート靴で透明な世界を逃げるんだけど、最後には世界から落下していくの)「ビルディング」「縊死体」、「卵」それから確か、ほかのアンソロジーにも時々載ってる「月蝕」あたりだなー。不条理な感じとか、視覚的イメージが豊かであることとかがその理由。それと、こう、一気にぼこぼこっと湧き上がる恐怖みたいなのがね、いいなーと思うのです。じわじわ落ちるんじゃなくて、落ちるときはもう、まっさかさまに奈落の底へ落ちるんだ。



「卵」なんて、何とも言えないの。最初はとっても清浄な感じなのに、途中からはものすごく気持ち悪い、生臭い話へ変わってしまう。この裏切りというか、悪意がいいんです(こういうのを普段いい人そうな作品を書いてる作家がやると、ただただ嫌な気がすると思うけど)。徹頭徹尾、意地悪なところ。



久作さんに関しては、中篇や有名な長編よりは、割と短めなものが好きだなあ。長いのになると、ちょっと混乱しちゃうんだ、こっちの頭が。



昔は、乱歩と久作の作品ってごっちゃになっていたんだけど、今はちょっと違うかなー、と思う(どっちも好きなんだけど)。江戸川乱歩は、かなりグロテスクなクライム・ストーリーでも「ほらほらこんなに派手に殺っちゃったよ!どうだ!鮮やかでしょ?」とでもいうようなからりとした明るさがある(気がする)けど、夢野久作のはもっと、じめっとした、地の底から足を掴んで離さないような怖さ。夢に出たら嫌なのは、断然後者です(笑)





あ、でも、そういう作品の中にもいくつか毛色の違うのがある。「髪切虫」は前世に目覚めた虫の悲(喜)劇。哀れだけど笑っちゃう。そして、戯曲仕立ての「涙のアリバイ」は、全ての登場人物の「手」だけを映してストーリーを作ろうとするもの。実際見たら結構面白いかもね、ストーリーは「・・・なんだそりゃ?」と思ったけど。



こんな感じかなー。またちょっぴり毒気のあるものに触れたくなったときには、お世話になります。
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つい最近、46歳という若さで亡くなられた杉浦日向子さんのエッセイ。亡くなって初めて、この方の作品に触れました。

読んでみて、この先新しい作品はもう出ないのか・・・と、とても残念に思った作品。



「一日江戸人」は、江戸風俗にまつわる色んなエピソードを、「入門編」「初級編」「中級編」「上級編」にわけて紹介したイラストエッセイ(というか、江戸案内書)。漫画家としての顔も持つ(「百物語」、おすすめです)杉浦さんの挿絵、とても楽しいです。特に、ちょくちょく登場する「メバルちゃん」(目の真ん丸&キラキラな女の子)と、「タマサカ先生」が可愛くて好きだな。

字が大きくて見やすいのも、よし。



どんなものが紹介されてるかっていうと、最初のほうでは江戸の人たちのフリーター人生やモテるための努力、奇人変人や義賊の紹介がされ、初級編では江戸の風物、生活が登場するんだ。中級編では、さて、江戸の街を歩いてみよう!っていう観光案内や、今すぐ新幹線に飛び乗って東京に行こう!なんて思っちゃうよな食べ物の紹介(じゅるり)があり、上級編になると、なんと春画の紹介(!)まで飛び出しちゃうのです。色とりどり!



こういう観光案内、ご飯やお菓子の紹介が大好きだっていうのもあるけど、こんなに楽しく読めたのは、やっぱり著者の語りによるところが大きいかな。TVで見た御本人の雰囲気を彷彿とさせる、おっとりと優しい、でも軽妙な(ところどころ、ぴりっと皮肉も効いてる)語り口、いいです。うんうん。

もちろん、エピソードそのものも、楽しい!江戸時代のベストセラー作家たちが出した出版苦労記(こういうの、現代の作家さんも書くよね)の内容ににやりとしたり、昔の相撲取りの人たちの「嘘だあ!」っていう武勇伝にわくわくしたり(昔は、お相撲さんって女性にとっても人気があったのね・・・)、美味しくご飯を味わうために、しばし調味料断ちするのがいいとの言葉に影響されてみたり。うーん、豊かな時代だったのだなあ、江戸。



また、ぼちぼちとこの方の作品も集めたいな。「大江戸美味草紙」というのが魅力的(やっぱり食べ物ネタ、好きなんです)。それにしても、46歳は若すぎる・・・(涙)
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家族の蔵書から拝借。昭和51年発行って書いてある。どうりで埃くさくてぼろぼろなわけだ・・・。



「あだし野」。これは、一人の男の生きかたを、三章構成で綴ったもの。第一章「愛する人達」では、主人公壬生七郎の若き日、放埓な暮らしぶりとその中でぼろぼろになる女たちが描かれる。第二章第三章では、長い年月が経ち、すでに落ち着いた壬生が、自らの体に腫瘍を発見し、葛藤しながら自らのこれまでを冷徹に見つめなおす過程を描いている。

後ろの解説や裏表紙を見ると、テーマは「精神の勁さ」ということらしいんだけど・・・。



えー。この本、はっきり言って嫌い、です。本が嫌いというよりは、この主人公に猛烈な憎悪を覚える。特に、第一章。

なんで嫌いかって、この人が自分だけ、汚れないから。徹頭徹尾、冷静に自分を見、女たちを見てるがゆえに、その行為自体は相当卑劣で汚いにも関わらず、一人つるりと綺麗な感じがする(「レモンのように涼しい顔をした男」、という表現は秀逸だなあ・・・)。だからこそ、読んでると苛立つ。たぶん、妻や愛人の苛立ちに共鳴してるんだと思うけど。

どうあっても自分と一緒に泥沼まで沈んではくれないとわかってる男に縛り付けられて、醜くゆがんでいく女たち。彼女たちはひどく汚く無様に見えるけど、その分哀れだ。好きにはなれないけどさ。



汚されないのが「勁さ」なのかもしれないけど、そんな勁さが冷酷さとどう違うのか、小娘の私にはわからん。中島みゆきの歌を思い出しちゃった。恋の終わりはいつもいつも、立ち去るものだけが美しい、ってやつ。

解説を読んでも、いまいち納得がいかない。第二章以降の落ち着いた回想シーンも、余計に腹が立ちます。女たちを砥石の如く扱って、それでたっぷり磨かれて、高みの境地に到達されても・・・と思っちゃう。あー、腹立つ。



ところどころ、色々感じるところもあったんだけど(女たちの心理描写は、うまいと思う。壬生七郎の人物造型も、それはそれでうまいとは思うけれども・・・)、もうどうしても生理的嫌悪感が拭えません。なんだこいつは!っていう。

時々男性作家の作品には、こういう男の人、出てくるなあ・・・。感情的になってもしょうがないけど、かちん、とくるんだよなあ。



もちょっと人生経験積んだら、もうすこしテーマにも迫れるかなあ。小林秀雄からはじめたほうがいいかも・・・。
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先日高松で開催された「藤城清冶影絵展覧会」のお土産に買った一冊です。「お母さんが~」のシリーズ、白黒版は二冊持っていたのですが(過去ブログ参照)、よもやカラーで三冊も出てるとは!残り二冊も、そのうち欲しい。



藤城清冶の美しい影絵とともに、やはり美しいお話が添えられています。文字は三段組で、ちいさな子供がそのまま読むにはちょっと、難しいかな(絵だけ眺めても楽しいと思うけど)。やっぱり、お母さんが読んで聞かせる本なのね。



ロシア・ドイツ・中国・フィンランド・・・などの民話とともに、チャペック・チェーホフ・ヘッセなど文豪の作品も収録されているのが面白いです。どちらかというと、わあ、楽しいなー!っていう話よりは、最後にほろりとしたりしんみりとしたり、余韻の残るお話が多いかな。そんなところも好みです。



印象に残ったお話は、

家出した三兄弟が、「何でも望みが叶う帽子」を持った小人たちから帽子を盗もうとするお話「小人の帽子」(帽子を放り投げて遊ぶ小人たちの絵と、帽子を盗まれて泣く小人たちの絵が可愛い!藤城さんと言えば、小人の絵ははずせません。)、愛されることしか知らない少年が、愛することの喜びを知って、幸福な気持ちで死んでいく話「ひとつだけの贈りもの」(ヘッセ)、子供のいない老夫婦に、一冬だけ喜びを与えてくれたかわいい雪娘の話「雪のこども」(ラスト、予想はつくけどかなしい・・・)、遊び友達の男の子とはぐれた子犬が、優しいピエロに拾われるが・・・という話「子犬とピエロ」(これも最後がほろり。ピエロ、かわいそう。チェーホフの作)、何度読んでも大好きな、アンデルセンの「小さいイーダの花」、女の子に一目ぼれしちゃったお月様のお話「レチカとお月さま」、チャペックらしいほんわかしたお話「郵便配達のウォーカーさん」(おじいさん小人がいっぱい出てくる。楽しい!)かなあ。ほとんど半分くらい挙げちゃったけど。



特に「レチカとお月さま」が、いい!シベリアの昔話です。あんまりレチカが可愛いので、トナカイを連れて追いかけてくるんです、お月さまが。けど、見事に返り討ちにあって(笑)、「うう、ごめんよー、これからは美しいお前を、いつでも空から照らしてあげるだけにするよー」って泣く泣く空へ帰っていくんだ。

だけど、時々恋わずらって、胸を痛めてやせ細っちゃうから、お月さまは満ちたり欠けたりするんですよ、っていうオチなの。ああ、なんかいいなあ・・・(><)このお月さまが、すんごい可愛い絵なんだー。最後のシーン、三日月になって涙を流してるの。あわれお月さま・・・。





この方の本は、どれも大切な宝物です。



さて。今週残りは本を読む時間がなさそうなので、来週まで、おそらく更新はないと思います。(いつも覗いて下さってる方、ありがとうございます!)ではでは、また来週。


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「あすくれかおす」のkotsuさんが走っている(?)のを見て「わたしも!わたしも参加したいー!」とばかりに無理やりバトンを攫ってしまいました。ありがとうございます~!

そんなわけで、本日は、ブックバトン。



ではでは、さらりとまいりましょう。



○持っている本の冊数

えと・・・途中まで数えて力尽きたので、ちょっとアバウトなんだけど、だいたい1100冊くらいでしょうか。技法書・辞典系を除く。後、家族と共有して読む本も除く。あ、でも絵本は含む(笑)。



多いのは、やっぱり文庫とビジュアルブックかなー。新書が少ないの。書庫が欲しい・・・(どこのお金持ちだ)





○最後に買った本(既読、未読問わず)

えっとなんだったかな・・・何冊か纏めて買ったんだ。

「田園交響曲」(ジッド)・「若きウェルテルの悩み」(ゲーテ)・「悲しみよ こんにちは」(サガン)「百物語」(杉浦日向子)。全部新潮文庫。

百物語は、漫画なんだけど、一応文庫の中に入ってるから入れておく。面白かったよー。一作一作タッチが違うんだ。わからないもの、と上手に付き合う町の人たちが面白い。闇を受け入れていた時代のお話。好き。

他のはまだ、読んでないなあ。「田園交響曲」は、表紙の品の良さにつられて買った。ジャケ買い。

○特別な思い入れのある本、心に残っている本5冊(まで)



五冊に絞るの辛いなあ・・・(泣)



「ファージョン作品集」(岩波書店)(全七冊・・・だけど、一冊にカウント)(←反則)・・・だ、だって、その中のどれかに絞れなんてあんまりです!多分、最も読み返す数が多かった児童文学集。父がファンだったみたいです。

小学校入るか入らないかくらいの頃、「銀のシギ」という本(これは長編)から買ってもらって読み始めたのですが、こんなに美しい世界があるのかと思ってびっくりした。勇敢で、でも繊細な魂を持つ妹娘が、夢うつつに見る幻(?)のシーンは、何度も何度も読み返しました。

短編集になってる「年とったばあやのお話かご」(乳母が四人姉妹に、くつしたつぎをしながら語ってくれるお話の数々。蝶々になっちゃう娘さんのお話が好きだった)や、語り手がとても魅力的な「ヒナギク野のマーティン・ピピン」もおすすめ。



「完璧な病室」(小川洋子)・・・読むのが怖くてたまらなかったし、読んだ後確実に暗い気分に陥るにも関わらず、中学校・高校と、何度も手に取った本。好き(?)すぎて、読書感想文まで書いている。

死への漠然とした誘惑と恐怖にとりつかれる一冊です。小川洋子、といったらこの作品のような毒のあるものを思い浮かべるので、「博士の愛した数式」はまだ手に取っていません。作風変わったのかな?



「尾崎翠集成」(筑摩文庫)・・・これはもう、卒論でやるほど好きな作家さんとの出会いの一冊だし、はずせません。詳しい感想は、多分このブログのどこかで書いてる・・・と思う。

「歩行」「こおろぎ嬢」「第七官界彷徨」などが特に好き。屋根裏などの狭い空間が舞台なのも、ツボ。



「二十歳の原点」(高野悦子)・・・これも前に、かなり熱を入れてブログ感想を書いた一冊。最初に読んだ小学校のときはよくわからなかったけど、今はかなり共感(安っぽい言葉だけど)するところがある。

生という道には、いっぱいトラップが張ってある。けど私は死んだりしない。死ぬもんか。死んでたまるか。

・・・と、言い聞かせつつ読む。



こんなところかなあ。



次にバトンを回す人は、日記の方で連絡してるから、いいよね。
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以前ここで、「悪の読書術」の感想を書いたのを覚えていらっしゃるでしょうか。その著者の姉妹編を図書館で見つけたので、借りてみたのです。



確か「読書術」の時も「まあ、一理あるけどなーんかひっかかるのよねえ」というようなニュアンスで書いたと思うんだけど、本書の読後感も、ビミョー・・・。



愛は無償のもの、純粋さに満ちたものであるという偽善を暴き、「すべての愛の根源はエゴイズムである」という認識に立って、恋愛において「意識的に」ふるまうべきだ、っていうのが本書の主張なのね。贈与力(相手が自分に何を与えてくれるか、また、何を与えうるか)とか、階級差の存在(それをどう捉えるかは人それぞれ、違うけど)とか、「善良な人々」が聞いたら怒りそうな説というやつを展開してるのです。



でもね、これ、筆者は読者を挑発したり、刺激的な論を展開してるつもりなのかもしれないけど、正直退屈でした。別にそんなこといちいち説明されなくたって、多かれ少なかれこんなこと、誰もが意識してるでしょ?と思った。言ったら身も蓋もないから、言わないだけで。

この人の想定してる読者そのものが、ちょっと幻想なんじゃないかなあ・・・と思わずにはいられなかった。



個人的に印象に残ったのは、谷崎潤一郎の晩年の奥さんとの生活(うーん、あんまり共感しないけど。人間ばなれしてる、という筆者の感想には同感です。)を紹介した部分と、村上春樹の「ノルウェイの森」に言及してる部分かなあ。男性と女性で、ヒロインの好みがはっきりわかれるってところ。そういうものかしら・・・。私は「ミドリ」ちゃんのほうが好きだけどな。でも「いなくなる女性」の問題、みたいなのは面白いと思った。

ヒロイン直子の名前が「純子」と書かれているのには、「?」だったけど。純子って誰なのさ(汗)



一週間ぶりの感想が、すごく投げやりなものでごめんなさい。でも、久しぶりにあまり心に残らない本でした。「読書術」のほうは、反感にしろ何か残るものがあったんだけどなあ。



恋愛論とか社交術、みたいなのはもういいかなー。今はあんまり興味がないのかも。
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九月に入ったので、模様替え。まだちょっと夏らしい感じのにしておこうっと。



さて、「水中都市・デンドロカカリヤ」。これは、安部公房の初期短編集11作を収録したもの。表紙のイメージは「水中都市」のものかな?腕の筋肉を想起させるものが三本あって、一番左のやつは先が鳥と魚のあいのこみたいになってる。それが、真ん中の腕みたいなやつにひねりつぶされかかって「ぐは」って言ってるみたいに見えます。一番左のは、面白い顔をしたお魚。ユーモラスさも漂うけど、なんとなーく、気味の悪い表紙。

そしてそれは、多くの収録作の印象と通じるものがあります。



全部通して読んで感じたこと。それは、「わからない」ということは恐ろしいものだなあ・・・っていうこと。読んでると、足元の地面がふにゃふにゃになってくるような気がする。中途半端な解釈を寄せつけないのね、どれも。スフィンクスの前に立ったら、こういう不安な気持ちになるのかもしれない。

作品自体が意図するところがよくわからなくて不安、っていうのもあるけど、物語の主人公たちの抱く「なんだこれ?なんでそうなるの?状況が把握できないよ、理解できないよ!」っていう恐怖に感染してそういう気分になるっていうのも、あるかな。

そして、読み終わった後の何とも言えない気持ち。わー、胃の中に石がごろごろ詰まってすっきりしないよー。だけど気付けば、そんな落ち着かない気持ちのまま次の短編をめくってしまうのだな。



特に印象に残ったのは、「デンドロカカリヤ」(植物になっちゃうコモン君の悲劇)「水中都市」(いきなり父と名乗る人物がやってきて人食い魚に変身した上、街が水没しちゃったよ!)「手」(伝書鳩の「おれ」の変身遍歴)「飢えた皮膚」(人間の皮膚がカメレオンみたいになる奇病があったら、どうしよう?)「詩人の生涯」(生活につかれたおばあさんが糸になり、コートになり、そして詩人を生む話)で、中でも好きなのは「手」「詩人の生涯」かな。

「手」は、「おれである」ということはどういうことなんだろう・・・と色々考える話。もとの伝書鳩であったときは感覚のみの存在だったのが、殺されて剥製にされ、さらにその体が腐ったあと、銅像にされた段階で、「観念としてのおれ」というものを確立する・・・って書いてあるんだ。銅像になったとき、すなわち、自分をかたちどってたものが消えたときはじめて「おれ」というものを意識する、不思議。わかったような、やっぱりわからないような。でもわからないなりに、ラストは気に入ってる。

「詩人の生涯」は、くるくる万華鏡を回しているように話が進む。なにか別のアンソロジーで読んだことがあるんだけど、すごく好きなんだ、これ。この短編集の中では一番、言葉から浮かぶイメージが美しい話じゃないかなー。人々の凍った夢が結晶になって街に降り注ぐんだけど、それをとかしていくのが詩人の言葉だっていうのが好きなんだ。ユーキュッタン、っていう、糸車が回る音が印象的。そしてラストの、詩人が本のラストページの中に消えていくというシーンも、印象的。



他の作品の感想も書きたいけど、さすがにちょっと疲れてきたのでここまで。安部公房、今はまだ「滅茶苦茶好き!」な作家ではないけど、気になるお人ではあるなあ。背表紙の色が変わらないうち(水色から銀色に変わりつつあるみたい。装丁も違う絵になってた。)に集めておきたいな、色々。
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