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つぶやいたり、描いたり。波に攫われる前の、ほんの一瞬。
八月最初の記事。さて今月は、何回くらい書けるかなっと。



このお盆休みは、たまっていた本をだいぶ消化できました。というわけで、ぼちぼち、日記のほうも書いていこうと思うよ。今日は、先日地元でやってた絵本フェアでの掘り出し物をごしょうかい。「THE VERY HUNGRY CATERPILLAR」(Eric Carle)「Gaspard and Lisa at the Museum」「Gaspard and Lisa's Rainy Day」(いずれもANNE GUTMAN・GEORG HALLENSLEBEN)の三冊です。いずれも、洋書絵本。



「THE VERY HUNGRY CATERPILLAR」は、ごぞんじ「はらぺこあおむし」のこと。小さな青虫は、生まれたときからお腹がぺこぺこ。月曜日には林檎を一個、火曜日には梨を二個たべるけど、まだまだお腹が空いてるの。毎日毎日色んな物を食べ、ついには・・・!という、お話。



小さい頃、この本大好きだったのですよ、ほんとうに。エリック・カールさんの絵本ならどれも好き、というわけじゃなくて、これだけがものすごく好きだったの。なのに親が、勝手に他所の子供にあげちゃったのです(><)いつかは自分で買い直さなきゃ!と思ってたのだ。

今回買ったのは、たぶんハンディタイプのやつ。手のひらよりもうちょっと大きいくらいかな。でも、青虫君が食べたものに穴が空いてる仕掛けは、ちゃんとそのまま。紙も分厚いので、子どもにも扱い易いと思う。



赤い頭に緑の「あおむし」が、本当に可愛い!食べても食べても不満そうな顔なのよね・・・。だけど一番のお気に入りの顔は、土曜日に食べ過ぎてお腹を壊したときの情けない顔!このページだけ、赤い顔がちょっぴりくすんでる・・・(^^;)

ちいさな青虫が、もうちいさな青虫じゃなくなったときのページも好き。緑の目玉がらんらんと光る、まるまると太った芋虫への変貌ぶりに笑ってしまいます。そりゃね、それだけ食べればね。



この絵本の、鮮やかな配色にはいつもうっとりします。青虫が食べたものがずらりと並んでいるページの楽しさは、この色遣いならではだと思う。あまりはっきりした色は好まない私ですが、この絵本は、やっぱりこの配色じゃないとね。青虫君の緑色も、とてもキレイ。



☆☆☆

「Gaspard and Lisa at the Museum」「Gaspard and Lisa's Rainy Day」は、日本で「リサとガスパール」として親しまれているキャラクター(犬のようだけど、たぶん犬じゃないんだと思う)の絵本です。というか、絵本が元なのね!キャラクターだけが単体で存在するのかと思ってました。

この二冊は、母が一目ぼれして買ったのです(笑)。お、確かにかわいいかも、どんな話かな?と思って読んだら、あ、面白い。そして思ってた以上に可愛い。メロメロです。

「Gaspard and Lisa's Rainy Day」は、リサが語り手。二人はリサのおばあちゃんの家にいます。でも外は雨!遊べません。しかたがないので、お菓子づくりを手伝ったり(というか邪魔したり)、お化け屋敷をつくったりするのだけど、それもことごとく、家族からは大顰蹙!「ほかの子みたいに、パズルでもして遊べないの?」と言われた二人が閃いたのは・・・・?という、お話。表紙の、部屋から雨の外を見つめる二人がかわゆい。そして二人の巻き起こす騒動がいちいち可笑しい。キャラクターが皆穏やかな表情なので、ドタバタ喜劇になってなくて、いいなあ。とぼけた笑い、といった趣かしら。

こっくりした色遣いが素敵。何となく、ふかふかした手触りのものを想像させます。それはもしかしたら、二人の毛なのかもしれない(笑)。



「Gaspard and Lisa at the Museum」は、学校行事で博物館に行った二人が巻き起こす騒動。こっちはガスパールが語り手。表紙を1枚めくったとこの、恐竜の絵が好きだな。背景色のグリーンがとてもキレイ。

それにしても、リサとガスパールってば、学校に行ってるのね!それもみんな、周りはフツーの人間!(笑)でも、それがかえってなんだかいい感じ。小さい頃、仲良しのお友達と一緒にいたときの感覚を思い出す。二人にしかわからない世界とか約束とかっていうのがあって、他の子は、みんなちょっと「違う」んだ。その感じが、リサとガスパールの世界にはよく出てると思った。きゅっとくっついてる感じが、ほんとに、いいなあ。なんだかきゅんときちゃうよ。



このシリーズは、随分沢山出ているみたい。ほかのもまた、読んでみようかな。






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ご無沙汰しております。この一ヶ月(以上か)全く本を読んでいないわけじゃなかったのだけど、なかなか読書日記を書くタイミングが合わなくて・・・。読んでから間があくと、どうも感想を書き難くなってしまう。



そんなわけで、タイトルにあげた本の感想を書く前に、最近読んだ本の名前、あげておきませう。特に印象に残ったものだけ、ちょいとメモ。

・絵のない絵本(アンデルセン 山室静・訳 いわさきちひろ(表記は岩崎ちひろになってる)・画 童心社)

・どこでもブックトーク―行ってみようよ本の世界へ―(北畑博子 連合出版)

・幼い子の文学(瀬田貞二 中公新書)

・林扶美子紀行集 下駄で歩いた巴里(立松和平・編 岩波文庫)

・図書館と子どもたち(島弘 日本児童文化史叢書33 久山社)

・エミリー(嶽本野ばら 集英社文庫)



「絵のない絵本」は、親が昔買ったらしい、本。白黒でどこか淋しげなちひろさんの絵が素敵。小さい頃読んだ記憶はないので、たぶん親が自分で読むために買ってたのでしょう。お月様の語るお話は、ときに胸にぐさりときます。ひっそりと消えていく命のお話が多いかな。



「下駄で歩いた巴里」は、林扶美子の紀行文集。うーん、なんて行動的な人。ぶつかる強さではなく、曲がって戻ってくる、あるいはすりぬけるしなやかさがある。旅は人生だ、なんて言葉、使い古されていると思うけど、この本読んでるとまさに、と思う。身を置いている場所に常に安住できなくて、どこか別の、まだ見ぬ場所(あるいは、捨ててきた場所)に思いを馳せる旅は、やはり人生そのものなのでしょう。



「エミリー」は、表題作が一番、好き。何度読んでもやはり、ツッコミ所満載だけど(この人の性描写、なんとかならないのか・・・汗)、けど、自分の服や趣味にアイデンティティを見出す生き方に、どうしようもなく惹かれるのも事実。主人公たちの抱く「居場所のなさ」に安易な共感を抱いたり、魂の双子モチーフ(?)を信じることは、とても危険であるけれど(自戒!)。結局ロマンチスト的部分を捨てきれない自分に苦笑。屈折した「好き」だな、この本に持つ感情は。

残りの本は、勉強用に読んだだけなので、割愛。



☆☆☆

さてさて、メインの本は、さっき読み終えた澁澤龍彦の本。その名も、「太陽王と月の王」。エッセイです。テーマはお城、人形、植物、パイプ、日本、猥褻裁判(笑)、サドとの架空対談、などなどなどなど、かなり幅広く取り揃えられた二十五編。表紙は、岩山(?)に建つお城と近くの街の上で、天使と金色のドラゴンが戦っているらしき絵。ドラゴンの首から流れる血と、眩暈がするほど青い空が印象的。それにしても、どうして河出文庫までデザインをリニューアルしちゃったんだろう。背表紙の黄色と、つるつるになっちゃった表紙の紙が、ちと不満。



さて。このエッセイ集は・・・どれも面白かったか、と言われると、うーん・・・です。ちょっと散漫な印象になっちゃったのは、あまり集中して読まなかったからかもしれないけど、やはりあまりにもテーマがばらばらで、ついて行けなかったせいもあるかも。

印象に残ったのは、表題作「太陽王と月の王」「人形雑感」「化けもの好きの弁」(←泉鏡花好きにはたまらない!)「パイプ礼讃」(洒落たエロティシズム。この人の、オブジェに対する固執が好きです)「嘘の真実 私の文章修行」かな。

特に表題作は、大好き。これは、ノイシュヴァンシュタイン城を建てたルートヴィヒ2世についての文章。このお城、テレビで観た事があるんだけど、なんとも不気味な雰囲気なんだよね・・・。でも、このエッセイを読むと、その不気味な城を建てた王様が、ちょっと愛すべきものに思えるのです。洗練された趣味や審美眼を持たず、ただただ自分の空想を満たしてくれるもの、自分が好きな物をごてごて取り入れてたら無秩序になっちゃった、というの、すごくシンパシーを感じます。わかるよ王様、その気持ち!なんて言っても、ルートヴィヒ2世は喜ばないでしょうが。



うーん、でも、次にこの人のエッセイを読むなら、「幻想の肖像」とか「毒薬の手帖」とか、ある程度一つにまとまった世界の中で繰り広げられるものを選ぼうかな。あと、つまみ食い的に読むんじゃなくて、読むときはいい雰囲気の中で、腰を落ち着けて読もう。でないと、イメージが自分の中で立ちあがって来ないですわー。




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前回の日記に書いた、「リンゴ畑のマーティン・ピピン」の姉妹作。とは言え、こちらは前作とはだいぶ趣が違う。ヒナギク野には、「あたしまだ眠りになんて行かないんだから!」という小さな女の子が六人と、かごの中で眠る小さな赤ん坊。マーティンは、この中にいる(はずの)自分の子を探しているの。



実はこの六人の女の子、前作の六人の娘たちの子供、ということになっていて、これまたそれぞれのキャラクターの違いが面白い。夢見がちで詩的なシライナ、一番幼くマイペースなサリー、そして母親に似て憎まれ口ばかりきくステラ、などなど。この子達が提案した「あんたが一人につき一つずつお話をして、そのあとその子が誰の子か当てられれば、寝に行ってあげる!でもはずしたら、あたしたち、もう一生寝になんか行かない!」という課題に従い、マーティンのお話が再び始まるのです。



小さな子供向けに語られたお話、ということなので、マーティンの語る話も前回とは随分違う。縄跳びが得意で妖精よりも上手に飛べる「エルシー・ピドック夢で縄跳びをする」(テンポがよくてとても楽しい縄跳び歌が出てくる)や、どちらも自分の世界でははみだしものの人間と妖精の話「トム・コブルとウーニー」はわくわくするような話だし、やせっぽちのこぶたちゃんの出てくる「タントニーのブタ」は、おみそのブタの可愛さにキュンとくる(そして語り口に溢れるユーモアにもくすっと笑える)。何だか荒唐無稽ですらある「セルシー・ビルのお話」みたいなのがあったかと思えば、綺麗好きの七人姉妹と、姉妹に育てられた超小柄な男の子の「ウィルミントンの背高男」みたいな、物悲しくも美しいお話もある。「ライの町の人魚」もいいなあ、決してものすごく美人とは言えない人魚が、持ち前のポジティブさを原動力に人間の世界に就職しちゃう話。楽しいお話だけど、憧れや理想というものをちょっと哲学的に描いてるような気もする。

最後、赤ん坊(マーティンの子供・・・?)に語られる「ニコデマスおじさんとジェンキン坊や」だけは、ちょっと謎。訳者もあとがきで書いている通り、何でこんなのが長々とこの話に入っているんだろう?と思います。前半は教訓物語なのかと思いきや、最後だけがナンセンス詩みたいなの。まだ何も知らない(あるいは全てを知っている?)赤ん坊向けの話だから、こういうお話が選ばれたのかなあ。でもちょっと、不調和かも・・・。



そうそう、お話とお話の間をつなぐ、マーティンと子供のやりとりも楽しい。自分の親の名前を当てられそうになったときの子供たちの反応が、すごく可愛いの。ある子は無理に笑顔を作り(でも目はウルウルしちゃう!)、ある子は見るも無残に打ち萎れる。怒っちゃう子もいる。マーティンは結局、わざと答えを間違えてやるのだけど、その時の反応もまた、子供によってずいぶん違うのが面白い。ファージョンは子供をよく見てるなあ~なんて妙に感心してしまった。



そしてラストは、あら!そう来るか!という感じ。この、現実と空想の境界がカーテンの如くゆらゆらするところが、ファージョンらしくて大好き。何度読んでも、色あせない魅力なのでした。
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久しぶりに、大好きなファージョン作品集を読み直しました。今回読んだのは、「リンゴ畑のマーティン・ピピン」と、「ヒナギク野のマーティン・ピピン」(いずれもファージョン作品集から。石井桃子訳・岩波書店)。ファージョン作品集は全巻揃えているのだけど、この2冊だけは、大人になってから自分で買った。どちらもかなり分厚いです。今日はひとまず、リンゴ畑の物語のみ、ご紹介。



「リンゴ畑のマーティン・ピピン」は、旅の詩人、マーティン・ピピンが男嫌いの娘たちに聞かせる六つの恋の物語を中心とするお話。短編集のような形をとりつつ、間ではマーティンと六人の乙女たち、そしてもう一人、父親に恋人と会うことを禁じられた娘、ジリアンの物語も絡んでくるのです。

この六人の娘たちのキャラクターがまた面白い。素直で賢い子、とてつもなく頑固な子、笑い上戸な子、泣き虫な子・・・と、それぞれの性格の違いがマーティンとのやりとりによって浮かび上がってくる。私は、一番年下で友好的な「ジョーン」がお気に入りでした。どの子もちょっとしたことでボーイフレンドと喧嘩しちゃってるんだけど、その理由が(そして、それに答えるマーティンの台詞が)結構核心を突いてきます。この辺は、大人になって読むとまた面白いと思う(そもそもこの作品に限っては、もとは子供向けに書かれた物ではないらしい。後に児童文学として受け入れられたことに、ファージョン自身もびっくりしたのだそうです。訳者あとがきより。)



若葉おとめたちを一人ずつブランコに乗せて聞かせる六つのお話&ラストも素敵。恋愛物はそう好きじゃないのだけど、これは別。私は「夢の水車場」と「誇り高きロザリンドと雄ジカ王」が特にお気に入りです。

「夢の水車場」。若い頃一度会っただけの男性の夢をずっと見続けて年老いていく女の子。夢の中で、彼女は彼と愛し合い、ともに苦難を乗り越えていく。彼女の夢をひきながら回りつづける臼。外見的には年老いながら、彼女の瞳だけはいつまでも若若しく、年若きものたちは、彼女の持つ何かに引き寄せられる。彼女の夢は、ただのオールドミスの淋しい夢にすぎないのだろうか・・・?

ラストは内緒。でも、とても素敵な終わり方だと個人的には思う(現実的な人にとっては、甘過ぎて許せないかもしれないけど。どっちかというと、ロマンチストな人向きかもね)。身につまされる台詞もあるけど、最後で救われます。



「誇り高きロザリンドと雄ジカ王」は、緊張感のある格調高い恋物語(だと思う)。王家の末裔だが、今は落ちぶれて乞食同然となっている(しかし決して誇りを失わず、人に哀れみを乞わないために、かえって憎まれ、さげすまれる)ロザリンドと、無口な鍛冶屋の物語。創作物語というより、何代にもわたって伝えられてきた伝説物語のよう(石井桃子さんの訳がいいというのもあるんだろうな)。



ロザリンドは、ギリシャ神話に出てくるアルテミスみたいなイメージの女性。牡鹿を従え、常に凛としているの。ちょっと男装の麗人のような感じでもある。誇りを守ろうとするあまりとんでもない行動に出たり、少女のような優しさや脆さをあわせもってもいるところも、ポイント(?)。そして「雄ジカ王」はさらにかっこいい!相手を屈服させるのではなく、むしろ誇りと気高さを求める点に、王としての威厳を感じます。うーんしかし、共に並び立つことができる関係の恋愛って、世の中にどれくらい存在するのだろう?なんて、ちょっと遠い目で考えてしまう(笑)。



他の作品も一作ごとに紹介したいけど、一日かかってしまいそうなので、ここらでがまん。それにしても語り手マーティンの魅力的なこと!この人は、自由なツバメのイメージだな。彼が歌う歌のように軽やかに、真実をつき抜けて飛んでいく。



次は、続編「ヒナギク野のマーティン・ピピン」のことを書くつもりです。
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ショートショートの名手、星新一の描く長編ファンタジー。主人公の「ぼく」は、朝から「何だか変だな」っていう予感を感じてた。なんだろうなんだろう?と訝しがる「ぼく」の前に現れたのは、何と「ぼく」にうりふたつの少年!好奇心に駆られて少年のあとをつけていったら・・・。色んな人の「夢」の世界を渡り歩く羽目になった「ぼく」の冒険が、このお話。表紙の絵(後藤貴志さんという人が描いてる)がとても可愛いです。初山滋さんの挿絵も面白いしね。



んで、読んだ感想・・・。それなりに面白かったけど、この人はやっぱり、ショートショートという形式のほうがあってるんじゃないかな。それぞれの夢に出てくるキャラクター(ピンクの象とか空飛ぶ巨大金魚とか)や世界の描写、発想の面白さだけならすごく好みのファンタジーだったんだけど(一つの夢からその次の夢に移動するときなんかが、すごく上手いなあ、と思う)、いかんせんテーマが露骨に出過ぎてる気がする。ちょっと、説教臭いというか、道徳の教科書的じゃない?と思っちゃうんだな~(これはうがった見方をする私が悪いのかもしれないけど。子供が読んだら、そんな風には思わないのかも)時々恐ろしく説明的な台詞が出てくるのがその原因かなあ。主人公や主人公のおじいさんがあまりにも物分りのいい台詞を吐くものだから、ちょっと興ざめしてしまうのですよ。折角こんなに生き生きした夢の世界なのに、只の現実の裏返しなんて。その瞬間、舞台裏の色あせたものがべろんと見えてしまう。

ショートショートの時も割とテーマは全面に押し出されてる気がするけど、皮肉混じりに語られてるときにはそれがそんなに嫌でもなかったのね。ファンタジーで同じテーマを扱うなら、もうちょっと上手にくるんで書けなかったのかなあ、惜しいなあ、と、生意気にも思ってしまった。



星さんのファンタジーシリーズは、あと一、ニ作出てるみたい。読むかどうか、ちょっと考え中。
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お久しぶりです。もう、これが恒例の挨拶になりそうなくらい、更新が止まっておりましたー。どうやって読書日記を書いてたか思い出せないくらいなんだけど、久々に、更新です。



これは、ほぼ数週間ぶりに勉強以外で読んだ短編集八編。小川洋子、もう随分長い間読めないでいました。高校の頃のめりこんでいた薄暗いイメージが、最近の作品(「博士の愛した数式」とかね)によって粉々になるのが、何故かとても怖かったので。

でもこれは、「気持ち悪かったよ」という前評判を聞いたので(ひどい)、じゃあ読んでみるか、ということで、手に取ってみました。七戸優さんの表紙からしてとても恐ろしい・・・!不安げな表情で目を瞑った少女。後ろには、カラオケ店のドアみたいなのがあって、覗き窓(?)から見てる目が・・・!ずーっと後ろには、兎が走ってる。



騒がしい喫茶店で読んだんだけど、もう周りの喧騒をすーっと吸い込んでしまうような静けさ。そして、ひんやりとした冷たさ。確かにぞっとするようなグロテスクな描写があちこちにあるけれど(いきなし手がぶっちぎれたり、卵巣から毛が生えたりね)、不思議と嫌な気持ちにならない。何でだろう・・・多分、この人特有の、写真で撮ったような描写のせいじゃないかなあ。何かが腐乱したり崩壊していくところって、一瞬一瞬を切り取って見たときには、あまり怖くないんだと思う。妙に鮮やかだけど、温度が失われているというか、匂いがしないというか。



このストーリーは映画になってそうだなあ、という「飛行機で眠るのは難しい」、いきなり抜け落ちそうな階段を淡々とのぼっていると、やっぱりいきなり足場が崩れてショッキングなラストに叩き落される「まぶた」「お料理教室」、センチメンタルな描写じゃないのに、ラストで涙が出そうになる「リンデンバウム通りの双子」も面白いけど、私が特に好きなのは「バックストローク」と「詩人の卵巣」。



「バックストローク」は、私が最も好きな作品「完璧な病室」を思い出させる、徐々に病んでいく(それも、その病み方が体の変化となって現れる)弟と、それを静かに見守る姉との交流が軸となった話。水泳が得意で、母に病的な愛情をかけられていた弟は、ある日片手を持ち上げた泳ぎの姿勢のまま、もとに戻らなくなってしまう。徐々にミイラのようになっていく左腕。弟は、その姿勢のまま、家のありとあらゆる隙間を見つけて、そこにひっそり収まる。そしてときどき、姉の「わたし」に色んな話をしてくれる(これって、いしいしんじの「ブランコ乗り」とよく似た構図だよね。だいぶ描き方は違いますが)。そのときの、弟の入っている狭いスペースを思うと、なぜだかとてもうっとりしてしまうのです(密室好き)。一人しか入れないスペース、っていうのが良い。そこで彼は、何を見ていたのだろう。



「詩人の卵巣」は、ちょっと表現するのが難しい話。雰囲気がとても好きなんだ(特にラストのへん)。あと、眠りのイメージをこんなに美しく表現できることに驚く。他の作品もそうだけど、小川洋子の「こちらを裏切るイメージの連鎖」がとても好き。ああ、これはこれの象徴ね、とか、このテーマだからこういうものを出すのね、と纏めることを拒否した人物や小物が唐突に出てきて、でもそれらが最後には違和感なく繋がっている。創作をする上で、見習いたいと思う(おこがましいですが)。



上手に無気力を誘ってくれそうな作品。小川洋子、やっぱりいいなあ。
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図書館で借りたんだけど、もうこれは、後で自分で買います。ぜったい。可愛さと、ダークさと、淋しさに指から染まった。洗っても取れない。



全部で三つのお話からなる、絵本。まずストーリー。

「金曜日の砂糖ちゃん」・・・金曜日の砂糖ちゃんは、とっても可愛い女の子。みんな砂糖ちゃんが大好きで、一目その姿を見ようと集まってきます。庭の色んな生き物に見守られ、金曜日の砂糖ちゃんはぐっすりと、眠るのです・・・。

「草のオルガン」・・・ちょっと不機嫌な気持ちで、いつもと違う道を通ってみた。そしたら見知らぬ空き地の中に、鳴らないオルガンが。オルガンの「音」にひかれて、バッタやちょうちょ、カラスがきたよ!

「夜と夜のあいだに」・・・夜と夜のあいだに目を覚ました子供はどうなるの?どこへ行くの?



愛くるしい、静かな雰囲気を湛えた子供たち。だけどじわじわと、その背後から染みてくる真夜中の闇の気配。三篇のうちの二篇はほのぼのとしたお話なのにも関わらず、どこかさみしい気持ちになるのは何故だろう。

子供時代を通り過ぎ、少女時代の終わりごろにいる人が、子供を通してかつて自分の中にあった感覚を手繰り寄せようとしてるような感じのする絵本。子供の楽しさや淋しさを描いているんじゃなくて、通過していくものを眺める淋しさに満ちている、絵本。



だからきっと、これは子供向けの絵本じゃないんだ。酒井さんの子供たちの中に入っているのは、紛れもなく大人の孤独や危うさだと思う。「夜と夜のあいだに」の、髪を漉く女の子の表情に、どきりとした人は、そう少なくないはず。あどけないはずなのに、むしろそこに妖しさを見てしまった。



・・・うん、夜と夜のあいだに起きてしまったら、もう帰って来れるわけ、ないね。見送ることすらできない。

けれど、私はとてもそこへ憧れる。扉を開けて、あの女の子が行った場所へ、私も旅してみたい。「草のオルガン」の男の子が見つけた空き地へも行ってみたい。もう、無理なのかもしれないけど。

だからせめて、何度もこの本を読もう。


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ヤギ飼いの少年、マウルス。彼は毎日村のヤギたちを預かって、牧場へ連れていきます。マウルスのお気に入りは、がんこなシロ、片方しかツノのないアカ、そしてちいさなぶちヤギである、チビの三びき。だけどこの3匹、なかなか困ったやつたちで、マウルスの目を盗んでどこかに行っちゃった!慌てたマウルスは、彼らを探しに出かけるのですが・・・



という、お話。可愛らしい子供が、責任感と不安に押しつぶされそうになりながら、それでも勇ましく小さな冒険をやってのける姿が、いい。事態が解決したときの、マウルス君の晴れ晴れした様子には、誇らしささえ滲んでいます。



他の作品でも散々書いたように、やっぱりカリジェの描く動物はいいなー。どことなくユーモラスで、だけど変に擬人化したり子供に媚びたところがない。中でも、今回の騒動の元のヤギ3匹といったら、おとぼけでマイペースな姿に、笑ってしまう。

私が一番好きなのは、疲れて眠るマウルスが見る夢が、現実とごっちゃになって描かれてる場面。昼間あった動物たちや、乗り物や、雲が、部屋にそっと入ってくるシーンなんだけど、これがとっても美しいんだ。私がちいさな子供だったら、この一頁が気に入って、寝る前に読んでもらいたがるかもしれないな。
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イギリスの児童図書館の草分け的存在であり、長きにわたって児童図書館や児童書の発展に尽くしてきた、アイリーン・コルウェルの著書。やー、読んでよかった・・・!という読後感でいっぱいです。一人の人間の回想録としても、子どもとの接し方を知る上でも、そしてもちろん、図書館とストーリーテリングの持つ役割・重要性を知る上でも、いい本だと思います。



表紙をめくってすぐに出てくるのは、著者の写真。優しいおばあさんが、日本からのお土産だというぶたさん(かな?)の腕人形を持って笑ってる。ほんとに見るからに、温かい子ども好きのおばあさんだなあ、という感じ。



内容は大きく三つに分かれてて、第一章ではコルウェルさんが児童図書館になるまでの半生が綴られてる。ここが一番面白かった!本の虫だった少女時代、お話の世界を元に兄弟たちと遊ぶ生き生きした日々のあたりは、ファージョンの子ども時代を思い出させる。なんだか、ここだけ取っても子どものためのお話が作れそう(それは、訳者が石井桃子さんだからということもあるのかな?易しい言葉で、語りかけるような文章になってる)。それから図書館学を学ぶために苦労した学生時代(でも、この学生生活の描写も、楽しい)、最初の仕事場である図書館での冷遇や挫折、それからチャンスが舞い込み、念願である児童図書センター創設の仕事に関わっていくあたりまでも、かなりわくわくさせられました。悪ガキとの悪戦苦闘の日々には、思わず笑ってしまう。

もともとそんなに気の強いほうでもなく、決して目立つ存在でもなかった彼女が、一つ一つ努力して、自分のやりたい仕事に近づいていく姿には、色々考えさせられるものがありました。肝心なときに一歩踏み出せる勇気があるかないかで、多分人生は全く違うのだろうな。ううむ。



第二章では、ストーリー・テリング(主に子どもたちに、絵本などのお話を読んであげること。)の必要性と、それを行う際の重要なポイントが、自分の経験をふまえてわかりやすく語られる。ここは、勉強としてとっても役にたった。あんまり抑揚をつけたり大げさな身振りをする人がいい話し手ではないこと、話し手は、お話と聞き手の仲介者であるという点をよく理解すること、語るストーリーを好きになり、よく自分のものにしておくこと・・・・ふむふむ、なるほど。今度図書館に行ったら、「おはなし会」を背後で盗み聞き、してみようかなあ。



第三章は、彼女のこれまでのお仕事(児童図書館員として子どもに接する以外にも、良い児童書を選ぶ仕事や、後の児童図書館員を指導する仕事もある)に対する思い、それがどれほど生き甲斐に満ちた仕事であるかが情熱をもって語られています。月並みな言葉になるけど、この人はほんとに、ほんっとに子どもが好きなのだなあ。本の中の豊かな世界に触れた時の子どもの喜びを、こうまで共有できる人って、そんなにいない気がする。天職としか言いようがないよね。



巻末には、著者が来日した時の講演録も収められてます。こっちも、よい。

読み終わった後、とても真摯な気持ちになる一冊でした。まだまだ、学ぶべきことはいっぱいあるなあ。
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久々の、絵本。やあ、和んだー。



ストーリー。いしころじまに住む3匹の仲良しカエルの名前は、マリリン、オーガスト、そしてジェシカ。ジェシカは好奇心旺盛な女の子で、いつも何かを見つけては「すごいでしょ?」って帰って来る(だけど仲間は、ちっとも驚かない)。

ある日ジェシカは、白い綺麗な卵を拾ってくる。これにはみんなびっくり。「これはにわとりのたまごよ!」って、物知り(?)のマリリンは言う。そうこうしてるうち、変な姿の「にわとり」が生まれてきて・・・!

・・・と、後半は、ひみつ。表紙にいるのは、にわとりじゃないにわとり(笑)。かえるたちの、お茶目な勘違いが可愛い。最後はからりとおわかれするのだけど、そこが余計に、しんみりさせるとこ。

「また会えるね、遊びに来てね」とあっさり言えちゃうところ、いつでもまた会えるわ!ということに対する疑いのなさが、子どもの世界の美しさかもしれない。



それにしても、カエルたち、可愛いなあー。どのシーン見ても、微笑んでるんだもの。レオ=レオニの、シンプルだけど、魅力的な造型には、いつ見ても脱帽です。
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